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歯ぎしりの原因と治し方|放置すると歯が割れる?歯科医師が解説

最終更新日:2026年3月24日

「朝起きると顎がだるい」「家族に歯ぎしりを指摘された」といったお悩みはありませんか?
歯ぎしりや食いしばりは、自分ではコントロールしにくい無意識の癖ですが、実は歯を失う大きな原因の一つです。

本記事では、歯ぎしりの原因から、歯に与える深刻なダメージ、そして歯科医院で行う治療法までを詳しく解説します。

歯ぎしり・食いしばりとは?

歯ぎしりや食いしばりは、口腔内の悪い習癖です。

単なる「寝ている間の癖」や「無意識の音」と軽く捉えられがちですが、実はその破壊力は凄まじく、歯や顎の骨に対して、日常の食事(咀嚼)の際の数倍から十数倍もの負荷がかかっていると言われています。

このブラキシズムは、起きている時に無意識に行う「覚醒時ブラキシズム」と、睡眠中に行われる「睡眠時ブラキシズム」に大別されます。

特に睡眠中は、脳によるリミッター(加減)が外れてしまうため、自分の体重以上の力、時には60kgを超える異常な圧力が歯の一点に集中することもあり、放置すると歯の寿命を劇的に縮めてしまう要因となります。

歯ぎしり(グラインディング)と食いしばり(クレンチング)の違い

歯ぎしり(グラインディング)と食いしばり(クレンチング)は、どちらもブラキシズム(bruxism)と呼ばれる「歯やあごの非機能的な習癖」の一種ですが、動き方と負担のかかり方が異なります。

国際的な定義では、ブラキシズムは歯をこすり合わせる動き(grinding)や強く噛みしめる動き(clenching)などを含む反復的なあごの筋活動とされています。

グラインディング(歯ぎしり)

上下の歯を横にギリギリと強く擦り合わせる、最も代表的なタイプです。

就寝中に「ギギギ」と大きな音が出るため、家族などの同居人に指摘されて発覚することが多いのが特徴です。
歯の表面(エナメル質)が広範囲に削られやすく、歯の先端が真っ平らになる「咬耗(こうもう)」を引き起こします。

クレンチング(食いしばり)

上下の歯をギュッと強い力で噛みしめ続けるタイプです。

グラインディングと異なり、音が出ないため周囲に気づかれにくく、本人も自覚しにくいのが非常に厄介です。

常に垂直方向へ強大な圧力がかかるため、歯の根元が折れる「歯根破折」や、歯を支える骨の破壊を招きやすい危険な状態です。

夜間だけでなく日中にも起きている

「歯ぎしりは寝ている時にだけするもの」という認識は、今や過去のものです。
近年、歯科業界で注目されているのが「TCH(歯列接触癖)」です。

本来、人間の上下の歯が接触している時間は、1日のうち食事や会話を合わせても合計で20分程度。

それ以外の時間は、唇を閉じていても上下の歯の間には1~3mmの隙間(安静空隙)があるのが正常です。

しかし、パソコン作業やスマホ操作に集中している時、無意識に歯を当て続けてしまう「微弱な食いしばり」が現代人に急増しています。

このわずかな接触が長時間続くことで、顎の筋肉が疲弊し、夜間の激しい歯ぎしりを誘発するトリガーにもなっているのです。

歯ぎしり・食いしばりの原因

なぜ歯ぎしりをしてしまうのでしょうか。
その原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っていることが多いです。

①ストレス・緊張(最大の原因)

もっともよく知られているのが、ストレスや緊張、不安との関係です。

特に食いしばりは、仕事中や集中しているとき、我慢しているときなどに無意識で起こりやすく、心理的負荷が高いほど増えやすいことが多くの研究で示されています。

 

臨床的にも、「気づくと奥歯を強く噛んでいる」、「朝起きるとあごがだるい」、「忙しい時期に悪化する」という方は少なくありません。

とくに覚醒時ブラキシズムは、ストレスや不安との関連が強いとされ、睡眠中の歯ぎしりよりも心理的要因の影響を受けやすいと考えられています。

②噛み合わせの問題

以前は「噛み合わせのずれが歯ぎしりの主因」と考えられることもありましたが、現在は噛み合わせだけが主な原因とは言い切れないという見方が主流です。

近年では、ブラキシズムは中枢神経系や心理的要因、睡眠の質などが大きく関わる多因子性の習癖であり、噛み合わせの影響はあっても主因としての位置づけは限定的とされています。

 

ただし、噛み合わせの違和感や特定の歯への早期接触があると、一部の歯や顎関節に負担が集中しやすくなることはあります。

そのため、噛み合わせは「原因そのもの」というより、
症状を悪化させたり、歯の破折や詰め物の脱離を起こしやすくする要因として考えるとわかりやすいです。

③飲酒・喫煙・カフェインとの関係

飲酒・喫煙・カフェインは、歯ぎしりや食いしばりとの関連が指摘されています。
とくに睡眠時ブラキシズムでは、これらの習慣が睡眠の質の低下や覚醒反応の増加に関わり、症状を助長する可能性があるとされています。

 

アルコールは、入眠を助けるように感じても、実際には睡眠を浅くしやすく、夜間の異常な筋活動と関係することがあります。

喫煙はニコチンの刺激作用、カフェインは覚醒作用によって、特に夜間の筋活動や睡眠の質に影響する可能性があります。

ただし、これらは単独で必ず発症させる原因というより、リスクを高める関連因子として理解するのが適切です。

④睡眠時無呼吸症候群との関連

最近とくに注目されているのが、睡眠時無呼吸症候群(OSA)との関連です。

睡眠時ブラキシズムは、睡眠中の呼吸障害や中途覚醒と関係して起こることがあり、いくつかの報告ではOSAとブラキシズムが一定割合で併存するとされています。

睡眠関連呼吸障害との併存はおおむね20~40%程度とする報告があり、
OSA患者の一部では睡眠時ブラキシズムが高頻度にみられます。

 

機序としては、無呼吸や低呼吸のあとに起こる覚醒反応とともに、あご周囲の筋活動が高まることが関与すると考えられています。

いびきが強い、日中の眠気がある、起床時の頭痛がある方では、歯ぎしりだけでなく睡眠時無呼吸の評価も重要です。

【セルフチェック】あなたは歯ぎしりしてる?8つのサイン

歯ぎしりは「自覚がない」ことが一番の怖さです。

以下の項目で3つ以上当てはまる方は、
知らないうちに歯に深刻なダメージを与えている可能性があります。

  • [ ] 朝起きると顎が疲れている・痛い
  • [ ] 歯がすり減っている(先が平らになっている)
  • [ ] 歯の詰め物が何度も外れる
  • [ ] 頬の内側に噛み跡がある
  • [ ] 頭痛・肩こりが慢性的にある
  • [ ] 歯にヒビが入ったことがある
  • [ ] 知覚過敏の症状がある
  • [ ] 家族に歯ぎしりの音を指摘されたことがある

3個以上当てはまった方へ 放置すると、将来的に歯を失うリスクが格段に高まります。手遅れになる前に、一度精密検査を受けましょう。

歯ぎしりを放置するとどうなる?歯への5つのダメージ

歯ぎしりや食いしばりによって歯にかかる力は、私たちが日常的に食事をする際の力の比ではありません。

睡眠中などの無意識下では、脳による制限制御が外れるため、自分の体重の数倍(60kg〜100kg以上、時にはそれ以上)という驚異的な圧力が歯や顎に加わります。

この異常な負荷を毎晩、あるいは日中の集中している時間帯に繰り返し受けることで、お口の中には「構造的な崩壊」が始まります。

放置することで引き起こされる、代表的な5つの深刻なダメージを詳しく解説します。

①歯がすり減る・欠ける

もっとも代表的なのが、歯の表面が少しずつ削られていくことです。

特に睡眠中の歯ぎしりは無意識のうちに強い力がかかるため、歯の先端や噛む面がすり減り、ひどくなるとエナメル質の摩耗、象牙質の露出、知覚過敏、歯の小さな欠けにつながります。

②詰め物・被せ物が割れる

歯ぎしりの力は天然の歯だけでなく、詰め物や被せ物にも繰り返しかかります。

そのため、レジン充填、インレー、クラウン、ブリッジなどが欠ける・外れる・割れる原因になります。
ブラキシズムのような過大な咬合力は、修復物の長期的な安定性を下げ、摩耗や破損のリスクを高めるとされています。

③歯根が折れる(歯根破折)

強い力が長期間かかると、歯の見えている部分だけでなく、歯ぐきの中の歯根にもダメージが及ぶことがあります。

特に神経を取った歯や、大きな土台・被せ物が入っている歯は、もともと割れやすくなっていることがあり、そこへ食いしばりや歯ぎしりの負荷が重なると歯根破折につながることがあります。

歯根破折は保存が難しく、抜歯になることも少なくありません。

④顎関節症を引き起こす

歯ぎしりや食いしばりは、歯だけでなく、あごを動かす筋肉や顎関節にも大きな負担をかけます。

その結果、朝起きたときのあごのだるさ、口が開けにくい、あごが痛い、カクカク音がする、こめかみ周囲の張りなど、顎関節症のような症状が出ることがあります。

TMD(顎関節症)は、あごの関節や筋肉の痛み・機能障害を含む病態で、ブラキシズムは関連症状としてしばしば取り上げられています。

関連は単純ではないものの、歯ぎしり・食いしばりが症状を悪化させる要因になりうると示されています。

⑤歯周病が悪化する

歯周病そのものは細菌性プラークが主な原因なので、歯ぎしりだけで歯周病が始まるわけではありません。

ただし、すでに炎症のある歯ぐきや、支えが弱くなった歯に強い力が加わると、歯の動揺、噛むと痛い、歯周組織への負担増加といった形で状態を悪化させることがあります。

歯ぎしりの治療法|歯科でできること

歯ぎしり・食いしばりの治療は、単に「やめさせる」ことだけが目的ではありません。

実際には、歯のすり減りや破折を防ぐこと、あごや筋肉の負担を減らすこと、原因となる生活習慣や緊張を整えることが大切です。

睡眠時ブラキシズムに対する対応として、口腔内装置(スプリント)療法、認知行動療法、バイオフィードバック療法、薬物療法、咬合調整などがあります。

①ナイトガード(マウスピース)の作製【保険適用】

歯科で最も一般的に行われるのが、ナイトガード(就寝時に装着するマウスピース)の作製です。

ナイトガードは、歯ぎしりそのものを完全に止めるというより、歯のすり減り、欠け、詰め物・被せ物の破損、あごへの過剰な負担を減らすための保護装置として使われます。
睡眠時ブラキシズムに対する口腔内装置療法は、歯や補綴物の保護という点で広く用いられています。

②噛み合わせの調整

噛み合わせの調整は、特定の歯に強い力が集中している場合や、明らかな早期接触・高い被せ物などがある場合に行われます。

必要なケースでは、過大な負担を減らして症状の緩和につながることがあります。

ただし、ここは大事なポイントで、現在は「噛み合わせ調整だけで歯ぎしりそのものが治る」とは言い切れないと考えられています。

③ボトックス治療(自費)

近年は、咬筋などにボツリヌストキシン製剤を注射して、筋肉の過剰な力を弱める治療も行われています。

これにより、食いしばる力を軽くする、あごのだるさや筋肉痛を和らげることが期待されます。近年では、痛みや筋症状の改善に一定の有効性が示唆されています。

一方で、ボツリヌス治療は万能ではなく、長期成績や最適な投与量、安全性の評価にはまだ限界があるとされています。

自宅でできるセルフケア(ストレッチ・意識化法)

歯ぎしり・食いしばりは、歯科医院での治療だけでなく、日常生活でのセルフケアもとても重要です。

特に日中の食いしばりは、無意識の習慣として起こることが多いため、上下の歯はふだん接触させない」と意識するだけでも負担軽減につながります。

よくある質問

①歯ぎしりは子どもでもしますか?

はい、お子様(特に乳歯から永久歯への生え変わり時期)の歯ぎしりはよく見られます。

これは噛み合わせを調整するための生理的な現象であることが多いため、過度に心配する必要はありません。ただし、永久歯が生え揃っても続く場合は診察が必要です。

②マウスピースはどのくらいで作れますか?費用は?

最短2回の来院で作製可能です(1回目:型取り、2回目:お渡し)。
費用は保険適用(3割負担)の場合、3,000円〜6,000円程度です。

市販のものと違い、歯科医院で作製するものはご自身の歯型にぴったりフィットするため、外れにくく効果が高いのが特徴です。

③歯ぎしりは完全に治りますか?

歯ぎしりの原因の多くはストレスや無意識の習慣であるため、100%「止める」ことは容易ではありません。

しかし、マウスピース等の治療によって、「歯へのダメージを最小限に抑える」ことは確実に可能です。

まとめ

歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちにしていることが多く、ご自身では気づきにくい癖のひとつです。

しかし、続いてしまうと歯がすり減ったり、詰め物が外れたり、あごに負担がかかったりすることがあります。

気になる症状がある場合は、早めに歯科医院で相談することで、大切な歯を守りやすくなります。
少しでも心当たりがある方は、無理せずお気軽にご相談ください。