歯を失った時の治療法⑤それぞれの治療方法の比較

4回にわたって歯を失った時に歯医者で治療する方法を解説してきましたが、今回はそれぞれの治療方法の比較です。
大まかにわかりやすく解説しているので、通院している歯医者や患者様の状態によって異なる場合がありますから、必ず通院している歯医者に確認をしてください。
それぞれの治療方法の比較
治療ができる条件と難しくなる条件
| ブリッジ治療 |
できる条件
難しいことが多い条件
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| 差し歯 |
できる条件
難しいことが多い条件
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| 入れ歯 |
できる条件(実は最も幅広い)
難しい・合いにくい条件
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| インプラント |
できる条件
注意が必要・難しいことが多い条件
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それぞれの治療のメリット
| ブリッジ治療 |
①固定式で違和感が少ないブリッジは、支台歯(両隣の歯)に被せ物を装着して口腔内に固定する補綴装置です。 ②しっかり噛める(噛む力が安定しやすい)ブリッジは支台歯で支えるため、咬合時の安定性が高く、噛む力が入りやすい傾向があります。 ③見た目が自然になりやすい欠損部には人工の歯(ポンティック)が入るため、歯の連続性が回復し、見た目(審美性)を整えやすい治療です。 ④治療期間が比較的短いインプラントは外科処置や治癒期間(骨との結合を待つ期間)が必要になる場合があります。 ⑤保険適用ブリッジは、部位・設計・材料によっては保険診療で対応できる場合があります。 ⑥歯の移動や噛み合わせの崩れを防ぎやすい歯を失ったまま放置すると、隣の歯が倒れ込んだり、噛み合う歯(対合歯)が伸びてきたりして、噛み合わせが乱れやすくなります。 |
| 差し歯 |
①自分の歯の根を活かせる(歯を残せる可能性がある)歯の上の部分が大きく崩れていても、根が健康なら差し歯で回復できる場合があります。 ②周りの歯を削らずに済むブリッジは両隣の歯を削って支えにしますが、差し歯は基本的にその歯単独で治療が完結します。 ③固定式で違和感が少なく、噛みやすい差し歯は口の中で固定されるため、取り外し式の入れ歯と比べて違和感が少なく、噛みやすい傾向があります。 ④見た目(審美性)を整えやすい被せ物(クラウン)で歯の形・色を作れるため、見た目の改善もしやすいのが特徴です(※材料により仕上がりは異なります)。 ⑤治療期間が比較的短いことが多いインプラントのような外科処置や治療期間が不要なケースが多く、治療期間を短くできることがあります。 ⑥保険適用になる場合がある状態や部位、材料によっては保険診療で差し歯が可能です。 |
| 入れ歯 |
①幅広いケースに対応できるブリッジが難しいケース(奥歯の一番後ろなど)でも対応できることがあります。 ②外科処置が不要なことが多いインプラントのように外科手術が必要な治療と比べて、入れ歯は基本的に手術なしで治療できる場合が多く、体への負担を抑えやすいのがメリットです。 ③健康な歯を大きく削らずに済むブリッジは両隣の歯を削ることが多いですが、入れ歯は健康な歯を大きく削らずに作れるケースが多いです ④費用を抑えやすい(保険適用の範囲がある)入れ歯は保険診療の対象になることが多く、比較的費用を抑えて治療を始めやすい点もメリットです。 ⑤修理・調整がしやすい入れ歯は、使っていくうちに歯ぐきや骨の形が変わって合いにくくなることがあります。 ⑥治療の進め方を段階的に選びやすいまず入れ歯で噛める状態を回復してから、将来的にインプラントなどを検討するなど、段階的に治療を進めることもできます。 |
| インプラント |
①健康な歯を削らずに済む最大のメリットは、周囲の歯に依存しないことです。 ②自分の歯に近い噛み心地と安定性インプラントは顎の骨と直接結合するため、入れ歯のような沈み込みや動揺がほとんどありません。 ③見た目が自然で審美性が高い上部構造にはセラミックやジルコニアなどの材料が用いられることが多く、色や透明感を周囲の歯に細かく合わせることが可能です。 ④顎の骨が痩せにくい歯を失うと、その部分の顎の骨は噛む刺激を失い、徐々に吸収(骨が痩せること)していきます。 ⑤取り外しの必要がないインプラントは固定式の治療であり、毎日の着脱が不要です。 |
それぞれの治療のデメリット
| ブリッジ治療 |
①両隣の歯(支台歯)を削る必要がある健康な歯であっても削る必要があり、歯の寿命に影響する可能性があります。 ②支台歯に負担がかかりやすい(共倒れリスク)支台歯の歯周病が進行していたり、歯ぎしり・食いしばりが強かったりすると、支台歯が先に弱ってしまい、ブリッジ全体のやり直しにつながることがあります。 ③ブリッジの下(ポンティック周囲)が汚れやすい人工の歯(ポンティック)の下は、形態的に汚れがたまりやすく、歯周炎や口臭、炎症の原因になることがあります。 ④二次う蝕(被せ物のすき間からの虫歯)のリスク支台歯は被せ物で覆われるため、境目(マージン)にプラークが残ると、被せ物の中で虫歯が進行する(二次う蝕)ことがあります。 ⑤破損・脱離のリスク(噛み合わせや材料の影響)強い咬合力、歯ぎしり、硬いものを噛む習慣がある場合、ブリッジが欠ける・外れる・支台歯が割れる(歯根破折)などのリスクが上がります。 ⑥欠損部の骨が痩せていくことがあるブリッジは欠損部に歯根がないため、欠損部分の顎の骨には刺激が入りにくく、時間とともに骨が痩せていく(骨吸収)ことがあり、見た目(歯ぐきが下がって隙間が見える等)に影響することもあります。 |
| 差し歯 |
①歯の根が残っていないとできない差し歯は、自分の歯の根(歯根)が土台として使えることが前提です。 ②土台(コア)や被せ物が外れることがある差し歯は「根+土台(コア)+被せ物(クラウン)」で成り立っています。 ③二次う蝕(被せ物の中の虫歯)になりやすい差し歯は被せ物で覆われるため、境目(マージン)に汚れが残ると、見えないところで虫歯が進行することがあります。 ④歯根破折(歯の根が割れる)リスクがある神経を取った歯は脆くなりやすく、差し歯を入れた後に強い力がかかると、歯の根が割れることがあります。 ⑤歯周病があると長持ちしにくい差し歯は歯の根を支える骨と歯ぐきが健康であることが重要です。 ⑥歯ぐきとの境目が目立つことがある(見た目の変化)時間が経って歯ぐきが下がると、被せ物の境目が見えたり、黒いラインが目立ったりすることがあります。 ⑦材料によって見た目・強度・費用が変わる保険診療と自由診療では材料の選択肢が異なり、仕上がりや耐久性にも差が出ます。 |
| 入れ歯 |
①慣れるまで違和感が出やすい入れ歯は歯ぐきの上にのる装置なので、最初は「異物感」「話しにくさ」「うまく噛めない感じ」が出ることがあります。 ②痛みや擦れが出ることがある(調整が必要)入れ歯は使ってみないと分からない当たりが出やすく、装着後に「歯ぐきが痛い」「口内炎ができる」「食べると特定の場所が当たる」などが起きることがあります。 ③噛む力は天然歯より弱く感じやすい入れ歯は歯ぐき(粘膜)でも支えるため、固定式のブリッジや自分の歯に比べて噛む力が弱く感じることがあります。 硬いもの・粘りのあるものは慣れるまで食べづらい場合があります。 ④外れやすい・ずれやすいことがある特に、奥歯の一番後ろがない場合(遊離端欠損)、歯ぐきの形が変化している場合、唾液が少ない場合などは、入れ歯が動きやすくなることがあります。 ⑤残っている歯に負担がかかることがある(部分入れ歯)部分入れ歯はバネ(クラスプ)などで残っている歯に支えてもらうため、設計や噛み合わせによっては支えの歯に負担がかかることがあります。 ⑥毎日の清掃が必要(取り外して洗う)入れ歯は外して洗えるメリットがある一方、洗浄を怠ると口臭、カビ、歯ぐきの炎症の原因になります。 ⑦定期的な調整が必要(合わなくなることがある)歯ぐきや骨は少しずつ変化するため、入れ歯は時間とともに合わなくなることがあります。 |
| インプラント |
①保険適用外が基本で、費用と治療期間がかかるインプラントは原則として自由診療です。 ②外科手術が必要インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む外科処置を伴います。 ③インプラント周囲炎のリスクインプラント自体は虫歯にはなりませんが、歯周病に似た「インプラント周囲炎」を起こすことがあります。 ④全身状態によっては適応外になるインプラントは外科処置を伴うため、全身状態の影響を受けます。 |
治療期間の大まかな目安
状態や歯医者によって異なりますので、通院している歯医者に確認をしてください。
| ブリッジ治療 | 約2〜4週間(根管治療がある場合は差し歯の治療の前に1〜2か月かかる) |
| 差し歯 | 約2〜4週間(根管治療がある場合は差し歯の治療の前に1〜2か月かかる) |
| 入れ歯 | 約3~6週間 |
| インプラント | 約3〜6か月(骨との結合期間を含む) |
治療費用の大まかな目安
状態や歯医者によって異なりますので、通院している歯医者に確認をしてください。
| ブリッジ治療 | (3本の場合) 保険適用:約3万円前後 自由診療:約20万〜50万円前後 |
| 差し歯 | 保険適用:約5千円〜1万円前後 自由診療:約8万〜18万円前後 |
| 入れ歯 | 保険適用:約5千円〜1万5千円前後 自由診療:約8万〜80万円前後 |
| インプラント | 保険適用:原則なし(※特殊条件を除く) 自由診療:約30万〜50万円前後 |
まとめ
ブリッジ、入れ歯(義歯)、インプラントにはそれぞれ得意なこと・苦手なことがあり、「これが絶対に正解」という治療はありません。
大切なのは、いまのお口の状態(残っている歯・歯ぐき・噛み合わせ)と、生活の希望(見た目、違和感、費用、治療期間、将来のメンテナンス)をすり合わせて選ぶことです。
迷ったときは、メリットだけでなくデメリットや将来のリスクまで含めて説明してくれる歯科医院で、一緒に整理していきましょう。
あなたにとって「無理なく続けられて、長く噛める」選択肢がきっと見つかります。


