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歯を失わないために知っておきたい歯周病について

最終更新日:2025年12月2日

歯科医療の現場で、歯を失う原因として最も多く見られるのが歯周病です。
日本では30歳以上の成人の約80%が罹患していると言われ、もはや“国民病”ともいえる存在です。
しかしその一方で、歯周病について正しく理解し対策を取れている人は決して多くありません。

このコラムでは、歯を守るために知っておきたい歯周病の基礎知識と予防のポイントを解説します。

歯周病とはどういう症状か

歯周病は、歯を支えている「歯ぐき」や「骨」が炎症によって壊されていく病気です。
はじめのうちは痛みがほとんどないため、気づかないうちに進行してしまうことが多くあります。
でも放っておくと、歯がグラグラして最終的に抜けてしまうこともあります。

①歯ぐきの腫れ・出血

歯みがきのときに血が出る、歯ぐきが赤く腫れているといった症状が見られます。
これは、歯ぐきに炎症が起きている証拠です。

②口臭の増加

歯周病菌が出すガスや、歯ぐきの中の膿(うみ)が原因で、
口臭が強くなることがあります。

③歯ぐきが下がり、歯が長く見える

炎症によって歯ぐきが下がると、歯の根元が見えるようになり、
「歯が長くなった」と感じるようになります。

④歯の動揺(ぐらつき)

歯を支えている骨が溶けてしまうと、歯がぐらつきます。
進行すると噛むだけで痛みを感じたり、自然に抜け落ちてしまうこともあります。

⑤噛んだ際の違和感や痛み

「噛むと浮いたような感じがする」「食べ物が挟まりやすい」などの違和感が出てきたら
歯周病が進行している可能性があるので要注意です。

歯周病の原因

歯周病の主な原因は、プラーク「歯垢」という細菌のかたまりです。
歯の表面や歯と歯ぐきのすき間に残った汚れが細菌の温床となり、炎症を引き起こします。

また、以下のような生活習慣も、歯周病を悪化させる原因になります。

  • 歯みがきが不十分
  • 喫煙習慣
  • ストレス・睡眠不足
  • 糖尿病などの全身疾患
  • 不規則な食生活

こうした要因が重なることで、歯周病はどんどん進行してしまいます。

歯周病の進行状況

①健康な状態

歯ぐきは淡いピンク色で引き締まり、ブラッシングしても出血しません。

治療法

この状態を維持するために、毎日の正しい歯みがきと定期的な歯科検診を続けてください。

②歯肉炎

プラークの細菌が歯ぐきに炎症を起こし、赤く腫れたり出血が見られるようになります。
痛みなどは感じないことがほとんどです。

治療法

丁寧な歯みがきと歯科医院での「歯肉炎の治療」で改善します。

③軽度の歯周病(P1)

炎症が歯ぐきの奥まで広がり、歯を支える骨が少しずつ溶け始めます。

歯周ポケットと言われる歯と歯ぐきの溝が深くなっていき、歯ぐきの出血や腫れが多く見られる様になります。

治療法

自宅でのセルフケアで対処できないため、歯石や汚れを徹底的に除去する歯周病の治療を行います。

④中等度の歯周病(P2)

歯を支える骨がさらに減り、歯がぐらつくこともあります。
口臭も強くなり、噛むと違和感が出ます。

治療法

歯石や汚れを徹底的に除去する歯周病の治療や、歯ぐきの中の汚れを外科的に除去する
「歯周外科治療」を行う可能性があります。

⑤重度の歯周病(P3)

歯ぐきが大きく下がり、歯が大きく動くようになります。
支える骨がほとんどなくなり、歯が抜け落ちることもあります。

治療法

歯を保存できる場合は、歯石や汚れを徹底的に除去する歯周病の治療や、歯ぐきの中の汚れを外科的に除去する「歯周外科治療」などを行います。

保存が難しい場合は抜歯し、入れ歯やブリッジ、インプラントなどで機能を回復します。

歯周病になると、その他の病気にもなりやすい可能性があります

最近の研究で、歯周病は「お口の中だけの病気」ではないことがわかってきました。
歯周病菌や炎症物質が血液に入り、全身の病気に関係していると考えられています。

①脳梗塞・心筋梗塞

脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、脳への血流が途絶えることで脳細胞が障害される病気です。
心筋梗塞とは、心臓の血管(冠動脈)が詰まり、心筋に酸素が届かなくなることで心臓の筋肉が壊死する病気です。

歯周病菌が血管に入り込むと、血管の中で炎症を起こして血栓を作りやすくします。
その血栓が心臓や脳の血管を詰まらせると、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことがあります。

②糖尿病

糖尿病とは、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の作用不足により、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる病気です。
血糖値が高い状態が続くと、血管や神経が傷つき、全身にさまざまな合併症を引き起こします。

糖尿病の人は免疫力が下がるため、歯周病にかかりやすくなります。
一方で、歯周病による炎症が血糖値を上げる作用を持つため、糖尿病が悪化することがあります。
つまり「歯周病と糖尿病はお互いを悪化させる関係」にあります。

③認知症

認知症(にんちしょう)とは、脳の働きが低下し、記憶・思考・判断力・言語能力・注意力などの認知機能が持続的に低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。
加齢による単なる「物忘れ」とは異なり、生活機能が障害される点が特徴です。

歯周病菌が脳に入り込み、アルツハイマー型認知症の原因物質を増やすことが報告されています。
また、歯を多く失うことで噛む刺激が減り、脳の働きが低下しやすくなるとも言われています。

歯周病にならない・重症化しないためにできること

歯周病は「静かに進行する病気」ですが、日々のちょっとした習慣やケアで予防することができます。
ここでは、基本のケアから生活習慣まで、歯周病を防ぐためのポイントを詳しく紹介します。

①正しい歯みがきを習慣にする

歯周病予防の基本は、なんといっても毎日の歯磨きです。

歯ブラシの持ち方

毛先が歯肉溝(歯と歯ぐきのすき間)に少し入るように、
歯ブラシの毛先の角度を45度にしてください。

磨き方

歯と歯ぐきの境目に毛先をあて、1本ずつ小刻みに磨いてください。
前歯だけでなく、奥歯や噛む面、歯の裏側までしっかり磨くことが大切です。

歯と歯の間のケア

歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れは取りきれません。
デンタルフロスや歯間ブラシを使って、汚れをしっかり取り除いてください。

就寝前のケアを念入りに

夜は唾液の分泌が減るため、細菌が増えやすくなります。
寝る前は特に丁寧に磨き、プラークを残さないようにすることが重要です。

歯ブラシの交換

歯ブラシは1か月を目安に交換してください。
歯ブラシを裏返して、ヘッドから毛先が見えていたら交換の時期です。
毛先が広がった歯ブラシでは、汚れを取りきれません。

②口腔環境を整える

うがいやマウスウォッシュの活用

細菌を減らすために歯ブラシの後に行う、食後や寝る前のうがいも効果的です。
アルコールフリーのマウスウォッシュは刺激が少ないのでおすすめです。

口の乾燥を防ぐ

口呼吸や唾液の減少は細菌の増殖を促します。
水分をこまめに摂り、口の中を潤すことが大切です。

噛むための歯を残す工夫

食べ物を片方だけで噛む癖がある場合は、左右バランスよく噛むように意識しましょう。
歯ぐきや骨の健康維持につながります。

③生活習慣を見直す

歯周病は生活習慣とも深く関係しています。

よく噛むことを意識する

よく噛むことで唾液の分泌が増え、口の中の細菌が洗い流されやすくなります。
食事中はできるだけゆっくり噛む習慣をつけましょう。

バランスの良い食事

野菜やカルシウム、タンパク質をしっかり摂ることで歯ぐきや骨を健康に保てます。
反対に、甘いお菓子やジュースの取りすぎは、歯周病の原因になる細菌の増殖につながりますので注意が必要です。

十分な睡眠

睡眠不足は免疫力を低下させ、歯周病菌に対する抵抗力を下げます。
規則正しい睡眠を心がけてください。

ストレス管理

ストレスがたまると体の免疫力が下がり、歯周病も進行しやすくなります。
適度な運動や趣味でリフレッシュすることが大切です。

禁煙

タバコは歯ぐきの血流を悪くし、免疫力を下げます。
その結果、歯周病が進行しやすくなります。

④定期的に歯石を取り、検診を受ける

歯石は自分で取れません。
歯石は硬くなってしまうと歯ブラシで取り除けません。放置すると細菌の温床になり、歯周病が再発しやすくなります。

クリーニングの目安

3〜6か月に1回(ご自身の歯ぐきの状態によって推奨頻度は異なります)
歯科医院でのプロフェッショナルケアを受けましょう。

歯周ポケットのチェック

定期検診では、歯ぐきの状態や歯周ポケットの深さを確認してもらうことが重要です。
早期に異常を見つければ、治療も簡単で済みます。

噛み合わせのチェック

歯が抜けていなくても、噛み合わせのバランスが崩れると歯周病の進行に影響します。
必要に応じて調整してもらいましょう。

⑤常に鏡でセルフチェックと早期治療が大事

毎日のセルフチェック

常に鏡で歯ぐきの色や形をチェックしたり、歯の動きに違和感がないか確認する習慣をつけましょう。

出血や腫れは小さなサイン

歯ぐきの出血、腫れ、口臭などは、体が「問題があります」と教えてくれているサインになります。
自己判断で放置せず、早めに歯科医院で相談しましょう。

まとめ

歯周病は、「痛みがないまま静かに進行する病気」です。
そのため、多くの人が気づかないうちに症状が進んでしまい、気づいたときには歯を失う原因になっていることも少なくありません。
しかし、歯周病は決して防ぐことができない病気ではありません。
正しい知識と日々のケア、そして定期的な歯科受診があれば、重症化を防ぎ、自分の歯を長く保つことが可能です。

たとえ歯ぐきからの出血や口臭といった小さなサインでも、放置せず早めに対処することが大切です。
今日からできることはたくさんあります。
歯ぐきの状態をチェックし、正しいブラッシングを習慣化する。
食生活や生活リズムを整える。
定期的に歯科医院で歯の健康を確認する。
その小さな一歩が、将来の笑顔と健康を守る大きな力になります。