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歯を失った時の治療法②差し歯とは?

最終更新日:2026年2月3日

歯を失った時の治療法

歯が大きく欠けてしまったり、失ってしまったと思っていても、実は「歯の根(歯の土台)」が残っているケースがあります。

そんなときに選択肢になるのが、残っている土台を活かして歯の形を回復する「差し歯(被せ物)」の治療です。

自分の歯をできるだけ残せる可能性があると聞くと、少し安心できる方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、歯を失ったときの治療法を順番に紹介しています。

第2回は「差し歯」についてです。

「できれば歯を抜きたくない」という方が多いと思いますが、どんな状態のときに差し歯ができるのか、治療の流れやメリット・注意点を、できるだけ分かりやすく解説していきます。

差し歯とは?その正体と治療の仕組み

差し歯は、一般的に「歯を作り直す治療」として知られていますが、正確には歯の根(歯根)が残っている歯に、土台(コア)を立てて、その上から被せ物(クラウン)を装着する治療のことを指します。

つまり、歯をまるごと失ったときの治療ではなく、歯の上の部分(歯冠)が大きく欠けたり、虫歯で崩れたりしても、根が使える場合に“歯を残す”ための治療です。

治療の具体的な仕組み

治療は大きく分けて2つのステップで行われます。

コア(支台築造)

まず、残っている歯の根の管を掃除して整えた後、「コア(支台築造)」と呼ばれる土台(芯柱)を根の中に差し込みます。(虫歯が大きく差し歯になる場合は、この工程は含みません)

この土台には、金属製のものや、柔軟性があり歯が割れにくい樹脂(グラスファイバー製)のものなどがあります。

被せ物(クラウン)

次に、その土台の上に「被せ物(クラウン)」を装着します。

被せ物の素材は、保険適用のプラスチックから、保険適用外の見た目が天然歯に近く変色しにくいセラミックまで、用途や予算に合わせて選択が可能です。

差し歯の構造

差し歯は、構造的に大きく分けて以下の3つのパーツで構成されています。

差し歯の構造

歯根(しこん)

歯根(しこん):天然の歯の根っこです。

建物の「基礎」にあたる最も重要な部分で、これが顎の骨としっかり結合していることで、力強く噛むことが可能になります。

土台(コア)

土台(コア):歯根の中に差し込む芯の部分です。

金属製の「メタルコア」や、しなやかで歯根を破折から守る「ファイバーコア」などがあり、被せ物を支えるための柱としての役割を担います。

被せ物(クラウン)

被せ物(クラウン):外から見える「歯」本体の部分です。

セラミックや金属、プラスチックなどで作られ、見た目の美しさと噛み合わせを再現します。

どういう場合に差し歯が適しているか

差し歯は、歯をすべて失ってしまった場合の治療ではなく、「歯の根(歯根)が残っている場合」に選択される治療方法です。

次のような条件がそろっている場合、差し歯が適しています。

①歯の根(歯根)がしっかり残っている場合

差し歯は、自分の歯の根を土台として利用する治療です。

そのため、歯の上の部分が大きく壊れていても、

  • 歯の根にヒビや割れがない
  • 十分な長さ・太さがある

といった条件を満たしていれば、差し歯で歯を残せる可能性があります。

②歯周病が進行していない場合

歯の根が残っていても、それを支える歯ぐきや骨が弱っていると、差し歯は長持ちしません。

  • 歯周病がコントロールされている
  • 歯のグラつき(動揺)がほとんどない

こうした状態であれば、差し歯治療を行うことができます。

③虫歯や破折で歯の上部だけが失われている場合

次のようなケースでは、差し歯が第一選択になることが多いです。

  • 虫歯が大きく、詰め物では対応できない
  • 歯が欠けたり折れたりしたが、根は残っている
  • 神経を取った後で、歯を補強する必要がある

このような場合、抜歯せずに歯を残せる治療として差し歯が適しています。

差し歯が適していない場合

差し歯は、自分の歯の根(歯根)を土台にして被せ物(クラウン)を入れる治療です。

そのため、まず大前提として「土台になる歯の根が使えるかどうか」が重要になります。

以下の条件がある場合、差し歯治療を行うことができません。

①そもそも歯がない(歯根が残っていない)場合

抜歯してすでに歯がなくなっている、または根まで失っている場合は、差し歯はできません。

この場合の主な選択肢は次の3つです。

  • ブリッジ:両隣の歯を支えにして人工歯を固定
  • 入れ歯:取り外し式で歯ぐきや残っている歯で支える
  • インプラント:骨に人工歯根を入れて歯を作る

②歯の根が割れている・ヒビが入っている(歯根破折)

根が割れていると土台として使えないため、差し歯の予後が悪く、抜歯になることが多いです。

抜歯後は、ブリッジ・入れ歯・インプラントを検討します。

③歯周病が進行していて歯がグラついている

歯周病で骨が減ると歯が支えられず、差し歯にしても安定しません。

まずは歯周病治療を優先し、それでも保存が難しければ抜歯後に患者様のご要望に合わせて別の治療法(ブリッジ・入れ歯・インプラント)を選びます。

④虫歯が深く、歯ぐきの下まで進んでいる

虫歯が深いと被せ物の境目を適切に作れず、再発(再び虫歯)や歯ぐきの炎症が起きやすくなります。

歯質が確保できない場合は保存が難しいことがあります。

⑤残っている歯の量が少なく、土台が安定しない

歯の根が残っていても、歯質がほとんど残っていない場合は、

  • 被せ物が外れやすい
  • 根が折れやすい
  • 長持ちしにくい

などのリスクが高く、差し歯が適さないことがあります。

⑥根の中の感染が強く、治療しても改善しにくい

根尖病変が大きい、再発を繰り返すなど、感染コントロールが難しい場合は、差し歯にしても長持ちしません。

状態によっては抜歯→欠損治療(ブリッジ・入れ歯・インプラント)へ移行します。

差し歯のメリット

①自分の歯の根を活かせる(歯を残せる可能性がある)

歯の上の部分が大きく崩れていても、根が健康なら差し歯で回復できる場合があります。

抜歯を避けられる可能性があるのは、差し歯の大きなメリットです。

②周りの歯を削らずに済む

ブリッジは両隣の歯を削って支えにしますが、差し歯は基本的にその歯単独で治療が完結します。

そのため、健康な隣の歯を守れる点がメリットです。

③固定式で違和感が少なく、噛みやすい

差し歯は口の中で固定されるため、取り外し式の入れ歯と比べて違和感が少なく、噛みやすい傾向があります。

食事や会話が自然に行いやすい治療です。

④見た目(審美性)を整えやすい

被せ物(クラウン)で歯の形・色を作れるため、

  • 欠けた歯の形を整える
  • 変色した歯を白く見せる
  • 前歯の見た目を自然に近づける

など、見た目の改善もしやすいのが特徴です(※保険内治療では材料に制限があり、材料により仕上がりは異なります)。

⑤治療期間が比較的短いことが多い

インプラントのような外科処置や治癒期間が不要なケースが多く、一般的には型取り→装着という流れで進むため、治療期間を短くできることがあります(※根管治療が必要な場合は期間が長くなることもあります)

⑥保険適用

保険診療で差し歯が可能です(保険治療では制限があるため、保険外治療を選べば、状態や部位、材料の選択肢が広がります。歯科医院によって対応が違うため、詳しくは通院している歯科医にご相談ください)

費用を抑えながら機能回復を目指せる点もメリットになります。

差し歯の注意点

差し歯(被せ物治療)は、歯の根を活かして機能と見た目を回復できる一方で、土台となる歯(歯根)に負担がかかる治療でもあります。

長持ちさせるために、次の注意点を知っておくことが大切です。

①歯の根が残っていないとできない

差し歯は、自分の歯の根(歯根)が土台として使えることが前提です。

すでに抜歯して歯がない場合は差し歯はできず、ブリッジ・入れ歯・インプラントが選択肢になります。

②土台(コア)や被せ物が外れることがある

差し歯は「根+土台(コア)+被せ物(クラウン)」で成り立っています。

噛み合わせが強い、歯質が少ない、接着力が弱まるなどの条件が重なると、土台ごと外れることがあります。

③二次う蝕(被せ物の中の虫歯)になりやすい

差し歯は被せ物で覆われるため、境目(マージン)に汚れが残ると、見えないところで虫歯が進行することがあります。

痛みが出にくく気づきにくいケースもあるため、毎日の清掃と定期検診が重要です。

④歯根破折(歯の根が割れる)リスクがある

神経を取った歯は脆くなりやすく、差し歯を入れた後に強い力がかかると、歯の根が割れることがあります。

歯ぎしり・食いしばりがある方は特に注意が必要で、ナイトガード(マウスピース)を併用することもあります。

⑤歯周病があると長持ちしにくい

差し歯は歯の根を支える骨と歯ぐきが健康であることが重要です。

歯周病が進行していると歯がグラつき、被せ物をしても安定しない、あるいは早期にトラブルが起きることがあります。

⑥歯ぐきとの境目が目立つことがある(見た目の変化)

時間が経って歯ぐきが下がると、被せ物の境目が見えたり、黒いラインが目立ったりすることがあります。

保険外治療で材料の選択(メタルフリー等)や設計で目立ちにくくできる場合もあります。

⑦材料によって見た目・強度・費用が変わる

保険治療と保険外治療では材料の選択肢が異なり、仕上がりや耐久性にも差が出ます。

「見た目を重視したい」「長持ちさせたい」など希望がある場合は、材料の特徴を比較して選ぶことが大切です。

保険適用と自由診療の差し歯の違い

差し歯(被せ物治療)は、同じ「被せ物」でも保険診療と自由診療で選べる材料・設計の自由度が大きく異なります。

その結果、見た目・耐久性・汚れのつきにくさ・費用などに違いが出ます。

材質の違い

項目 保険の差し歯 自由診療の差し歯
主な材料 硬質レジン前装冠(プラスチック系)、部位によって金属冠、条件によりCAD/CAM冠(レジン系)など ジルコニア、e.max(ガラスセラミック)、メタルボンド(陶材焼付)、ゴールドなど
見た目 白くできるが、透明感・色合わせに限界が出やすい
経年的な変色・摩耗が起こることがある
色調・透明感の再現性が高く、より自然な見た目にしやすい
強度・

欠けにくさ

実用上十分だが、材料の制約があり、保険外治療と比較して、見た目や耐久性などに違いが出る 材料選択で強度を高めたり、欠けにくさを狙いやすい(例:ジルコニア)
汚れの

つきにくさ

表面が傷つくと着色・プラーク付着が増えることがある 仕上げ・材料によって表面性状を整えやすく、清掃性を高めやすい
金属アレルギー 金属を使うケースがある メタルフリー(ジルコニア等)を選べる

治療方法(設計・仕上げ)の違い

保険診療の差し歯の場合、ルールに沿った標準的な形・材料で機能回復を行うため、審美性(色合わせ・透明感)や形態の細かな調整は制限されやすい傾向にあります。

また、材料により、経年的に変色・摩耗・表面の傷が起こりやすいことがあります。

保険外治療の差し歯の場合、材料選択の幅が広く、目的に合わせて最適化しやすいのが特徴です。

  • 色合わせ(周囲の歯と自然になじませる)
  • 透明感やツヤの再現
  • 歯ぐきとの境目が目立ちにくい設計
  • 汚れがたまりにくい形態・仕上げ

など、仕上がりを重視して、細かな調整や再現性を追求しやすいです。

まとめ

差し歯は、歯の根が残っているときに、その根を活かして被せ物で歯の形と噛む力を回復する治療です。

歯を抜かずに残せる可能性があるため、「できるだけ自分の歯を残したい」という方にとって心強い選択肢になります。

一方で、差し歯は被せ物の境目から虫歯が再発したり、強い噛み合わせで外れたり割れたりすることもあるため、毎日のケアと定期的なチェックがとても大切です。

保険治療と保険外治療では材料や仕上がりの幅が違うので、患者様の見た目や費用のご要望に合わせて選んでいただくことができます。

「自分の歯は残せるのかな」「どの材料が合うのかな」と迷ったときは、ひとりで抱え込まずに、まずは歯科医師に相談してください。

歯の状態と希望に合わせて、いちばん安心できる方法を一緒に考えていきましょう。